これは、僕がこのブログを始める時、「これだけは絶対に伝えたい」と思っていた事の1つです。
- あるお店で、こんな事がありました。
- 貴方ならどうする?
- 販売員はルールを破ってでも売らないといけないのか?
- あるキャリアに、こんな上司がいました
- 販売員である前に、1人の人間として
- 上司からの指示を断れない時
- もし問題になったら
- その職場が「全て」ではない
●あるお店で、こんな事がありました。
いくら上司や先輩からの指示とはいえ、「これってコンプライアンス違反じゃないの?」「それって電気通信事業法違反では…」「これって(店舗の)ルールに反するんじゃないの?」と思って受付を躊躇うことは、ありませんか?
例えばの話。
ある日、ショップにて、新人販売員が、店長が接客したお客様を引き継がれる。
店長『このお客さん、MNP3台だから対応よろしくね』
と。しかし、この後お客様にヒアリングしていくと、おかしな事に気付く。そのお客様は奥様で、ご家族3台分の契約だったが、
客「契約は旦那の名義でやってほしいの」
との事。しかし、その旦那様の姿はどこにもない。その事をご質問するとお客様から、
客「旦那は仕事で来れないわよ。旦那の免許証のコピーも持ってきてるから、これで出来るでしょ?」
ご本人がいない状態で、しかもご本人の免許証の原本ではなくコピーで受付……そんな事、可能なのかな?。やっていいのかな?事業法のマニュアルに、ダメだって載っていたような気がする。
しかし、お客様はそれに続けて驚きの一言を。
「さっきの人(店長)はそれで出来るって言ってたわよ」
……店長が?新人スタッフとしてはにわかに信じがたかった。新人スタッフは、バックヤードに引き下がった店長に、受付してもいいのか聞いた。すると店長は、
店長「今日MNP取れてないから」
店長「こうでもしないと獲れないだろ」
店長「あとは任せるよ」
●貴方ならどうする?
……こんな時、貴方はどうしますか?
店長の言う事だし、確かにMNP3台は大きいし……と、受付を進めますか?
はっきり言います。この場合、もし、本人不在の、免許証コピーでの受付が、あとで問題になった時、一番に罰せられるのは、『貴方』です。上記の例で言えば、新人スタッフです。例え、店長の指示だったとしても、です。
お客様にお渡しするご契約のお控えや、キャリアのシステム上の契約履歴に残るのは、全て、実際に受付をした貴方の名前「だけ」です。この契約受付の責任者は、貴方なのです。
もし問題になった際、上長からヒアリングを受けた時、店長はおそらくこう答えるでしょう。
店長『彼に全部任せたので、僕は知らない』
と。店舗で起きた事なので、店長として、多少のペナルティはあるかもしれませんが、辞めさせられる事はないでしょう。例えば解雇になるとしたら、それは「貴方」です。
●販売員はルールを破ってでも売らないといけないのか?
持論ですが、僕はこう考えています。
『ルールを破る人間は、ルールを破らないと売れない人間。つまり、ルールの範囲内で販売する実力が無い人間』と。
『ルール』という言葉は、『モラル』という言葉に置き換える事も出来るでしょう。
●あるキャリアに、こんな上司がいました
ここで、あるキャリアの、数店舗を任される役職付きの人間の話をします。
『俺たちが最前線で販売していた頃は1日に20台も30台も売ってたんだよ』と、部下に自分の武勇伝を話す、ある上司がいました。
ある若手スタッフが、なかなか実績を上げられない時、その上司に相談したところ、
「1台の契約でも適用出来る割引を、『2台契約すれば適用出来る』とお客様に説明して、1台契約に来たお客さんに2台売ればいい」と、ルールにもモラルにも反する指示をした。
後にその指示が問題となり、その上司は自身の発言を認め、ペナルティを受けた。
普段から、その上司は、周りにこう話していたという。
『我々が店舗スタッフで務めていた頃は、誰でも安く使える画期的な料金プランが出来て、ニュースでも話題になり、何も考えなくてもドンドン売れた。でも今は時代が違う。各社とも同じような料金プラン。各社に差がない。となったら、もうこういう売り方しかないでしょ。普通に売ってても売れないじゃないか』と。
その上司は、現場の一スタッフとして働いている頃、ニュースなどでも取り上げられるくらいの画期的な安い料金プランが出来て、我先にとお客様の方からお店にドンドンやってきて、特に販売スキルがなくても、流れ作業のようにワンサカと売れたのだという。それで実績を上げ、そしてその実績が買われて出世した。
しかし、その後時代が変わり、各社が安くて使いやすい料金プランを全面に出している今、求められるのは販売スキル……しかし、後輩から『売り方』のアドバイスを求められても、『特に販売スキルが無くても料金プランのおかげでたくさんの販売をして、それだけで出世した』その上司は、まともなアドバイスが出来ず、結果、思いつくものは、『お客様を欺いてでも、とにかく売れればそれでいい』というものしかなかったのだ。
結局この上司は、後輩にアドバイス出来る程の「販売スキル」を持ち合わせないまま、実績、つまり『数字』だけで出世してしまった。これは、この上司が悪いのか、実績しか見ずに人間性を見なかった会社が悪いのか。
●販売員である前に、1人の人間として
このブログを読んで下さっている皆様は、こんな上司のような販売員にはなってほしくないし、こんな上司のいうことは聞いてほしくない。「たくさん実績を上げる販売員」より前に、1人の「誠実な人間」でいて頂きたいと、切に願うのです。
「じゃあお前はルールを破った事が一度もないのか」と聞かれたら……自分でもよくわからない。勘違いなどのミスは今まであったかもしれない。
しかし、人に迷惑をかけるようなルール違反や、実績のため、私利私欲のための法律違反は絶対やっていないと、自信を持って言える。
「ルールを破る事が普通だ」「実績のためにルールを破るんだ」と思うようになったら、販売員として、人間として終わりだ。
●上司からの指示を断れない時
では、このような上司からこのような指示を受けた時、販売員はどうしたらいいのか。
もちろん、まずはこのようなコンプライアンス違反となる受付は、何としてでも「しない」事。最前線で働く一販売員として、それは任務です。
しかし、上下関係というのは難しい。店長に刃向かうことはなかなか出来ないし、どんな状況でも、刃向かうことを許さない上司もいる。
そういう時は、相談出来る他の先輩に相談しよう。あくまでも、「自分の意志ではない」という事を、1人でも多くの人に、知ってもらうべきである。
もし、コンプライアンス違反なのかどうなのか、判断が難しい場合は、いわゆる「代理店サポート」に電話するのもいいでしょう。店長からの指示のまま伝え、「これで受付は可能ですか?」と聞いてみるのです。事細かく状況を説明し、代サポから「その受付は不可です」と言われたら、間違いなく不可です。
しかし、どうしてもそのような受付を「させられた」場合は、どうすればいいか。
まず、店控えの書類など、店舗に残す書類に、このコンプライアンス違反の指示をした人間の名前を残し、その人の痕跡を残しましょう。上記の例で言えば、さりげなく「○○店長のご案内」とか「店長からの振り」など、さりげなくメモをして、「店長」がなにかしらこの受付に関わっているという事を、形として残すのです。
また、自分のノートやメモ帳でもいいので、「○月○日○時○分頃、店長からの振りでMNP3台受付」「○○と指示されて」「○○にも相談」など、具体的にメモに残しましょう。
そして、これが一番大事かもしれませんが、後々、他の受付で、自分の判断でその「違反」に手を出さない事。「上司がやっていたから」という言い訳は、もちろん通用しない。
大事な事は、「これはダメな事なんだ」「これは違反なんだ」という意識を保つ事。それが麻痺してしまうと、今後判断が付きにくくなる。
●もし問題になったら
もし、あとになってこの件が問題になった場合、必ず、受付をした貴方にヒアリングが行われる。その際は、「全て上司の指示だった」と、はっきりということ。具体的に、どんな状況だったか、どのように言われたか、誰かに相談したか、それはいつか、など、細かく答えましょう。ここで、事前に取っていたメモが生かされる。
「上司のせいにしたら上司に怒られるかもしれない」「辞めさせられるかもしれない」などの遠慮は全くいらない。そもそも、そんな上司に好かれる必要はない。
それに、ここで遠慮していたら、結局全ての責任を取らされ辞めさせられる。
もし、『もうこんな職場嫌だし、辞める気だから』『クビでいいや』と思っても、ここでの証言は、ちゃんと事実を語る事。で無いと、最悪の場合、後にもし刑事事件などに発展した時、事前の自分の証言を覆す事ができない。
●その職場が「全て」ではない
「仕事」というのは、あなたの人生の『ごく一部』です。
もちろん、仕事をしないと給料を貰えないし、生活する事は出来ない。しかし、その仕事のために、自分の全てを捧げる必要はないのです。我々は奴隷ではありません。一人の人間として、仕事に立ち向かわないといけないのです。
重い話をしてしまいました……しかし、これだけはわかって頂きたい。
我々は、販売員である前に、一人の人間です。職場というのは、「人としても成長出来る場」でないといけません。
もちろん、「職場を変える」という選択肢もあります。そんな「コンプライアンス違反」が当たり前のような職場ばかりではありません。求人サイトを見ても携帯電話販売員の仕事はたくさんありますし、誠実に、楽しく働ける場所も、たくさんあります。
もし、「部下は使い捨て」と思っている上司がいたら、そんな上司は、こちらから捨ててしまえばいいのです。