なくならない残念なニュース
先日も、携帯電話販売員が自身の店の端末を不正に取得し、転売したとして逮捕された、というニュースを見ました。昔から、携帯電話販売員がその立場を利用し、不正に私利私欲を満たした行為がニュースなどで取り上げられるのを、何度も見たことがあります。
携帯電話の販売の仕事には、お客様の大事な個人情報をお預かりしたり、10万円以上する高価な商品を管理したりと、単なる「販売」の範囲を超えて、様々な業務が含まれています。
お客様からスマホの操作方法を聞かれて、お客様のご了承のもと、お客様のスマホを操作することもあります。
もちろん、販売員の犯罪行為を防ぐため、いろいろな決まり事や管理体制が、特にここ数年〜10年ほどでさらに強化されており、そのような「残念なニュース」が起きないよう、各キャリアで努力されています。
しかしながら、このような犯罪行為が、度々、耳に届いてきます。
今日はここに、その「販売員の不正行為」に関する、僕がある販売員から伝え聞いた話をご紹介します。
これが起きた店舗、量販店会社名などは特定したくありませんので、「ある会社の管理職から聞いた、あるキャリアで勤めていた時の話」とだけ、お伝えしておきます。一部脚色あり、ですが、大筋は、伝え聞いたそのままです。これは、数年前、この国のどこかで実際に起きたことです。
ある販売員から伝え聞いた地獄絵図
その管理職、Aは、ある量販店の一地域の統括を任されていました。しかし、その中のある店舗にて、ある疑惑がある事を聞きました。
当時、携帯電話、スマートフォンのご契約により、数万ポイントの、その量販店で使えるポイントがもらえるキャンペーンが行われていました。それはここ近年の「割引は22,000円まで」という法律が出来る前だったので、4万、5万などの大きなポイントでした。
そのポイントが、ある1つのポイントカードに、極端にまとめて貯められているというのです。もちろんご家族の方のご契約分もまとめて1つのカードに貯める、という方もいらっしゃるでしょうが、今回のそれは、あまりにも高額で、回数も頻繁なものでした。
量販店から、直属で担当していたラウンダーに話が行き、ラウンダーから報告を受けた管理職Aも、その話に入ることになりました。
状況や、関係者へのヒアリング、そして出勤日程との照会などから、ある1人の販売員、Bが、「容疑者」として名前を挙げられました。
その販売員Bが、お客様に案内する際、ポイントが貰える特典に関しては案内せず、契約完了後、レジにて会計を行なう際に、ポイントカードだけはB自身が偽名を使って作ったポイントカードを持っていき、ポイントを付与している、そしてそのポイントを同系列の別の店舗で使っている、という容疑だった。お客様はそもそもポイントの事は案内されていないので、特に不審に思わない、というわけだ。
しかも、その店舗では最近、棚卸しの際に、スマホの在庫数が極端に合わない、など、在庫に関しても不審な点がありました。それに関しても、『もしかしたら…』という疑惑が浮上しました。
管理職Aは、「全員への聞き込み」と称して、販売員Bと直接コンタクトを取り、話をしました。
『このような事が起きていて、販売員が疑われている。Bくんはそんな事、してないよね?』
と聞くと、Bは「何も悪いことはしていない」と答えました。
しかし、その後のさらなる調査の中、Bの不正行為である事が、ほぼ100%確定とされました。
およそ半年に及ぶ調査を終え、Aは、派遣会社の事務所に、Bと、その母親も呼び、個室で面談を行いました。ここで再度、Bに『何も悪いことはやっていないの?』と聞くと、さすがに親まで呼ばれた状況に怯えていましたが、それでも「…何もしていません」と答えました。
Aは、ここで『ここまでやりたくはなかったけれども…』と、いろんな書類や資料を机の上に並べました。量販店会社と共同で調べた調査資料。それは、Bがポイントを詐取した日、その金額、さらにその詐取したポイントを何に使ったか等…それを特定するには充分の資料でした。
Aは資料を見せながら、『この日はこの機種を販売した際に◯万ポイント、この日はこの機種で◯ポイント……すべてBくんが出勤の日で、レジに持っていっているのもBくん。すべて同じポイントカードが使われている。そしてそのポイントカードのポイントで、▲▲店で□□を購入している。▲▲店で□□を購入しているBくんの姿も、防犯カメラにしっかりと映っているんだ。これは全て、Bくんがやったんじゃないの?』
その直後です…。
Bがその資料と説明を聞いた後、顔は硬直し、口も震え、何も発する事が出来ず、目は、見開いているが何も見えていないような目で、そして、全身、ガタガタと震えだした。汗も吹き出て、椅子や机も音がするくらい、全身を痙攣させて止まらなくなった。
そして、その姿を見たBの母親は、自分の息子が全てやったのだと察し、地べたに跪いてAに対して土下座を始めた。
「もうしわけありません!もうしわけありません!」と何度も何度も土下座する母の横で、息子は痙攣が止まらず、ただただ呻き声を漏らしていたという。
A曰く、『見たことも想像したこともないくらい』の激しい痙攣を起こすBの横で、母が何度も土下座する…。まさしく『地獄絵図だった』との事であった。
その後、Bは、合わなかった在庫に関しても、自分がiPhoneを数台持ち帰り、リサイクルショップに転売した事を自供した。そのお金は、遊びのために使ったという。
被害総額は、ポイントと端末、合わせて、数百万円に及んでいた。
その後、Bの母が「お金は全てお返しします」と約束した事で、量販店会社は被害届を出すことを止め、起訴される事はなかったという。
とはいえ、すぐにその金額を払える貯蓄はなく、母親は、父親とともに、親戚一同に頭を下げて複数からお金を借り、詐取した金額分を返すことになったという。
ここで質問
さて、ここでこれを読んでいる販売員の皆様に質問です。
それでもあなたは、不正をしてでも、「一時の得」を得たいですか?
『やろうと思えば何でも出来る』からといって、何でもやっていいというわけではありません。そして、そのような不正行為をなくすために、法律やルールというものがあります。
上記の例のような「お金」の事だけではありません。『今日1日の実績がほしいからと言って、本人不在で委任状なしの新規契約を受け付ける』など、実績欲しさの不正も同じです。ほんの一時の「気持ち」のために不正に手を伸ばす事は、どんな状況でも許されないのです。
不正は必ずバレる
これは100%自信を持って言える事です。
「不正は必ずバレます」。
このような不正は、本気で調べたら必ずバレます。もちろん『バレなかったらイイ』というわけではありません。ただ、長くこの仕事を続けようと思うのであれば、このような不正に、一度たりとも手を染めるような事があってはいけません。
上記の「実話」を、是非ともよく覚えておいてください。