これは、販売員、というよりは、販売員を指導し、販売員を育てる、販売員の先輩、上司、上層部の方に、是非見て頂きたい内容です。「何もわからないただの販売員が、何を言ってるんんだ」っていうノリで読んで頂いても、全然結構です。
- 「買います」を言わせるためだけの研修
- 『買います』の後とは
- それは「売れたらそれでいい」という気持ちの表れ
- 「買います」以降の研修の必要性
- 副商材なら尚更
- 販売員も人間―「心理」というものがある
- 生きていくため…実績のため
●「買います」を言わせるためだけの研修
今まで11年、この仕事をしていて、受けた研修は数知れず。少人数で受けるものもあれば、大きな会議室を借りて大々的に行われるものもありました。
内容は様々。新人さん向けの初歩中の初歩の研修もあれば、中堅スタッフ向け、指導者向けの研修などもある。また、新プランや、新商品が出る時に、サービスインからお客様に正しい案内が出来るように、全員を集めて行われる研修もある。
今では、「オンライン研修」というものも主流になってきており、店舗でパソコンやタブレットなどを使ってリモートで行われる事も多くなりました。
そして、その99%が、「お客様に商品を買わせるための研修」。つまり、「契約を決めさせるまでの研修」であるというのが、長年の通例です。
つまり、如何にお客様に「契約しよう」と思わせるか、また、1台契約に来たお客様に、2台目3台目を、どのように案内して、家族のヒアリングもして、どうやって複数台契約に持っていくか。
そんな研修ばかり。
もちろんそれも大事。我々販売員、1台でも多くの契約を取り、店舗の実績を上げていかないと、販売員の人数を減らされ、異動や、最悪は職を失う人も出かねない。
でも、いや、だからこそ、提案するのは、
『必要な研修は、それだけではない!!!』
という事です。つまり、上記にあるような『買います、と言わせるための研修』だけではなく、『買います、と言わせた後に関する研修』が、前者のものと同じくらい必要なのではないかと、11年『研修を受ける側』を体験した僕としては、強く思うのです。
「下っ端の人間が偉そうな事を」と思うでしょう。でも、僕がそう思う具体的な理由は、後半で説明します。
●『買います』の後とは
さて、『買います』の後とは?
契約が決まった後、お客様に記入頂くべき書類にご記入頂いて、専用のパソコンやタブレットを使って登録作業を行います。
その際、お客様に本人確認書類をご提示頂き、スキャナなどで読み込みを行う。各オプションの加入提案、そのためのオプションの内容案内。そして重要事項の説明。もし、お客様からの質問に答えられなかった場合、販売員が不明な点がある場合は、代サポ(代理店サポート)に電話して、質問し、回答をもらう。
登録完了手前には、お客様控えやタブレット画面を見て頂きながら、登録した内容に関して間違いがないかどうかを確認して頂き、サインを頂いて登録完了ボタンを押す。
登録完了したら、端末にSIMカードを入れて立ち上げて、お渡しする書類をまとめてお渡し用のバッグに入れる。お客様のご希望があれば、スマホケースや保護フィルムなどの案内もして、スマホと一緒にお会計してお渡しして、一通りの流れが終了する。
しかし、その後、特に年配の方だと後日に再度ご来店され、「使い方を教えてほしい」「初期設定がわからない」と問い合わせされる事も多い。これも丁寧に案内し、納得してお帰り頂く。
※店舗によっての違いはあると思います。大きな店舗では、「買います」の後は、登録担当の別スタッフに引き継いで、あとはそのスタッフにおまかせしてすぐ売り場に戻り、売るための活動を行う、というフローになるお店もあるでしょう。これは、中規模、小規模店舗で、アプローチから登録完了、お渡しまで「ワンオペ」で行う店舗についてのお話しであると、ご理解ください。
●それは「売れたらそれでいい」という気持ちの表れ
「買います」の後、業務上、これだけの多くの流れがある。なのに、行われている研修の多くは、「買います」の前まで、なのです。
もちろん、「買いますの後」は、店舗で、先輩販売員から『OJT』を受けます。しかし、「買いますの後」に関して何も予備知識の無い販売員に、イチから全てを教えるというのは、先輩販売員にとっても大きな負担です。
また、私も実際に経験がありますが、キャリアによっては、4時間の座学の後、自分1人しかいない店舗に配属され、「わからない事は代サポに聞いてね」の一言だけで放り出された事もあります。さすがにその時は座学の際に登録方法に関しておおまかな話はありましたが、あまりにも不十分で、不安もありましたし、苦労したのを覚えています。
それは、教える側、上層部側の「売れさえすればそれでいい」「販売員は、お客様に、契約します、と言わせる事だけ出来れば、それでいい」という気持ちの、表れなのではないか、とも思うのです。
つまり、「登録作業がわからなければ代サポに聞けばいい」「もし登録が間違えていれば修正すればいい」「お客様は多少待たせてもいいし、ご迷惑をおかけしたら直属の先輩が謝ればいい」「クレームになったらそれなりの対応をして、お客様には引き続きこのキャリアを使って頂ければ、とりあえず実績にはなる」という、生半可な考えが、どこかにあるのではないかと思うのです。
しかし、1万歩譲って、「売れればそれでいい」という言葉を肯定したとしても、『買いますの後』の研修は、絶対に必要だと思うのです。
●「買います」以降の研修の必要性
それは、ただ単に、「登録できなきゃ意味がない」という事だけではなく、それは、店舗の販売員の『心理』に関する事です。
たとえば、若くて経歴の浅い販売員が、とはいえ新規、機種変更、一通り受付を覚えているため、1人で店舗を任されている場合。
あるお客様がご来店され、「1台、MNPを考えてるんだけど」という話になる。もちろん販売員としては、「やった」と思うだろう。しかし、その後のお客様の一言で状況が一変する。
「法人契約なんだけど、大丈夫だよね?」
この販売員は、法人契約の対応の経験がない。もちろん、書類や条件が揃っていれば受付は可能なのだろう(※店舗によって不可の場合あり)。しかし、OJTで教えてもらった事もないし、必要な書類すらわからない。施策が適用できるかどうかも、はっきりしない。
ちょっと戸惑っていると、お客様が「どうなの?出来るの?出来ないなら、他の店に行くけど?」と急かしてきた。
この時、この販売員は、どうするだろうか。
もちろん、『出来ます!』と即答して、席に掛けて頂き、わからない事は調べながら案内する販売員もいるだろう。しかし、そうではない人もいる。
完全に戸惑ってしまい。出来るかどうかの返答すらままならず、『少々お待ち下さい』とお客様を待たせて、代サポや先輩、上司に電話をして諸々確認し、『これなら自分にでも出来そうだ』と思えるようになってから、お客様に『ご案内出来ます』と答える。
しかし、『ご案内出来ます』という回答までもし時間がかかってしまったら、お客様のほうから、「やっぱりいいや」といって帰られてしまう事もあるだろう。
よっぽど、『いくら動揺しても見た目は堂々としていられる』、という販売員でない限り、お客様から、自分が出来ない事、わからない事を聞かれてしまうと、販売員はどうしても、その動揺が、声に、言葉に、動きに、態度に出てしまう。それを、この法人のお客様は、しっかりと見ているのだ。
そりゃお客様は不安になる。お客様には、「他のお店に行く」という選択肢があるのだ。
また、これは量販店スタッフに多いが、『これはわからない』『調べながら対応するとお客様を相当お待たせすることになる』と思うと、量販店スタッフにとっての「魔法の言葉」を繰り出す人もいるだろう。
『これはショップじゃないと受付出来ません』
…もちろん、本当にショップじゃないと受付けできない手続きは多い。しかし、それに便乗し、受付できる事でも、『受付けできない』と回答することで、この『ややこしい受付』から回避出来るのだ。失った件数は、他で補えばいい、と。
それによって、1件、2件と、獲れるはずの契約を、失っていく。
●副商材なら尚更
これが、スマホの新規契約や機種変更などとは違う、いわゆる『副商材』となれば、尚更である。
最近では、携帯電話ショップ、量販店では、スマートフォン・携帯電話以外も、固定回線を始め、電気の小売、クレジットカードなど、様々な『副商材』を扱っている。そして、それを獲得した場合、つまりお客様から「じゃあそれも」と言われた場合、いわゆる「ワンオペ」で、そのままその販売員が契約・登録作業を受け持つ事が多い。
例えば、クレジットカードの内容の説明や登録方法をまだ覚えていない、または自信がないという販売員が、クレジットカードの申込みを、自分から勧んで積極的にお客様に案内する事が出来るだろうか。
きっと、クレジットカードの案内はせず、スルーして淡々とスマホの契約だけを進めるだろう。これはもう「出来ないのがバレる」「自信のなさが表に出る」とか『以前』の話です。その接客ではその副商材の話は出ないまま終わるでしょう。
『出来ない事はやりたくない』という、販売員の心理が、ここに働くのです。
これが、僕が、「買います、の後」の研修が必要だ、と思う理由です。
●販売員も人間―「心理」というものがある
もちろん、座学で全てを覚えられるわけはありません。しかし、一通りの流れを、研修資料とともに教えられ、時間を使って研修してもらえた、という事実があれば、ある程度、前向きに、スマホの販売、副商材の販売に取り組めるでしょう。必要な『実績』にも繋がります。
何回かに1回、『この研修、意味あるんか?』と思う研修があります笑。そんな研修を削れば、またもっと違う、実践的な研修が出来るんじゃないかと思うのです。
契約申込書の書き方、
登録端末での登録の仕方(具体的に)、
ワンランク上の登録端末の活用方法、
本人確認書類の取扱と種類、
よく扱う補助書類の種類、
委任状、同意書などの書類の書き方、
重要事項説明の仕方と注意点、
登録前の確認での注意点、
お客様の端末の扱いと、お渡し準備、
操作説明でよく聞かれる事、
スマホケース、保護フィルム(ガラス)の案内
などなど、営業中でなかなか落ち着かないOJTじゃなく、座学で、腰を据えてしっかりと時間を掛けて教えてほしい事が、販売員には、たくさんあるはずです。
僕は、月に最低1回は、丸一日使っての研修があっても良いと思っています。それはリモートでも出来るはずです。
●生きていくため…実績のため
もちろん、我々販売員、売るのが仕事。売れなければ売上げはないし、仕事がなくなる。つまり、売れなければ、販売員の存在する意味はない。
しかし、現場で働く販売員、「自信」がなければ販売は出来ません。「不安」があれば、販売員も人間、尻込みしてしまったり、逃げてしまう事もあります。
「逃げるような販売員はいらない」と一蹴するのではなく、「不安」の要素を少しでも取り除く意味でも、「買います」までではなく、登録完了、お渡し、そしてその後のフォローまでの道筋を示す事で、販売員の自信にも繋がり、一歩でも前に進む事が出来るし、1件でも多くの実績に、繋がるのではないでしょうか。
以上、何も知らない、たかが一販売員からの、お話しでした。